「ここに住みたいな」
ポツリと漏らしたリンクの声。すぐ隣にいたものだから、聞き逃しようもなかった。
姉の囚われた魂は解放され、今、神獣ヴァ・ルッタはド・ボン山脈とルト山の間にある突き出した広い尾根に鎮座し、ハイラル城を取り巻く黒い怨讐、厄災ガノンを捉え続けている。
今、姉はヴァ・ルッタと共にあり、この里と共にあり、なによりも百年の間リンクと共にあった。ガノンを打ち倒したその後もきっと、姉の魂はリンクに添い続けるだろう。
里の中央に、ロスーリが掘った姉の像がある。その姿はまるで淑やかな少女であるのだが、自分の記憶に僅かに残る姉は、意固地であったり頑固だったりもっと自由なものだった。と、思う。
自分が物心つく前には、姉は英傑としてハイラル城へ招集されてしまい、そこからとんと姉の記憶は途切れている。
その頃の姉の思い出といえば、夜半、鎧を編み込む姉の姿だけ。その鎧は古くからのゾーラの習わしで、婚姻者へ送るものであった。
当時の俺は姉がなにを作っているのかわかりもしないものだから、寝ないのか、と問おうとしたが、姉が今まで見たこともない顔をしていたから、気圧されてやめたのだ。
今ならわかる。
あのときの姉の顔は、恋い慕う者を想うときの表情だったのだ。
姉は多分、ガノンと対峙するときには自身が無事でない可能性もあると覚悟をしていたろうから、あのようにひっ迫した顔になっていたのだろう。
――事実、姉は死んだ。
喪われてしまった肉体は戻らない。長寿のゾーラといえど、死した体は朽ちるのみである。
姉の遺体はない。ガノンに奪われたヴァ・ルッタなぞ誰にも入れない、捜索などできようもない。例え遺体があったとしても墓は作らないだろう。そのために姉を讃え祀る像を父上は作らせたのだ。
姉の像に背を向け、南西の空を仰ぐ。広場の入り口にあるアーチ門の向こうのヴァ・ルッタを望む。
姉が死してなお寄り添うもの。
雷の矢が扱えるものなら誰でもよかったというのは事実であるし、それこそゾーラ川付近を通りかかるもの手当たり次第に声をかけていたのも事実である。通りすがったリンクに声を掛けたのもただの偶然だ。まったくの僥倖であった。(向こうからすれば、最初から神獣を目指して歩いてきたのだから、当たり前のことだったのだろうが。)
見知らぬゾーラ族の男の頼みを聞き入れ、あの雨の中、魔物の群れを薙ぎ里への道を踏破し、里の者もみな近づけないライネルの住まう雷獣山へ一人赴き事もなげに帰ってみせ、そして神獣を、姉の魂を解放した。
……終わってみれば、姉が慕うに十二分に値する立派な男であった。
もうちょっと続くんですけど(冒頭のセリフ回収するとこまで行ってないし)
ゲームのやりこみで続きの内容が決まってくのでここまでで…
スタッフロールは見たんですけど踏破率まだ30%しかいってないので
シド王子の口からミファーのことを語ってもらうのが好きです…
ミファーは結局言えず仕舞いで、リンクもミファーの気持ちに気づいていたとしても言わなかったと思うので
なんだか秘密めいた気持ちを抱いた奇妙な友人同士で、そのまま当人の気持ちは当人の口からは秘匿してほしいなあって…
タイトル詐欺でごめんて
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